営業を経て、企画・開発へ。調理家電のヒットメーカー

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  • 近藤 富昭さん
  • 近藤 富昭さん

    大阪市西区に本社を置く、生産財商社であり、住宅設備機器や生活用品も取り扱う「株式会社山善」に勤める、大阪出身の近藤富昭さん。2017年から家庭機器事業部 商品企画1部に所属し、6年間で100点以上にも及ぶ調理家電を企画・開発。人気製品を次々と生み出すヒットメーカー、近藤富昭さんの企画・開発にかける想いをキリトリます。

はじめに

「ともに、未来を切拓く」山善とは

 

山善は、1947年、戦後の焼け野原の大阪で、創業者である山本猛夫が、復興に必要なハンマーやスコップなどの販売から商いをスタートし、機械工具や土木・作業用機器など、取り扱い商品を拡大しました。

 

今もなお、『「切拓く」精神※1と「考動力※2」を持つ自業員※3』という創業者のDNAを受け継ぎ、「ともに、未来を切拓く」というパーパスを掲げて挑戦を続ける企業です。

 

「ともに、」とは、山善に関わるステークホルダーはもちろん、地球環境までを含んでおり、あらゆるステークホルダーとともに、サステナブルな未来を切拓きたい、との強い想いが込められています。

 


※1:常に変化に対応しながら革新と創造に挑戦する心構えのことです。
※2:自ら考えて動く、考えながら動く力のことです。
※3:想定外の変化が常態化する中でも自主的に挑戦・考動を現場で実践することで変化に機敏かつ 柔軟に対応し、常にお客様にお役立ちする、当社グループ独自の哲学を持つ自力本願人財のことです。
営業を経て、企画・開発へ。調理家電のヒットメーカー

山善は「生産財」と「消費財」を取り扱う専門商社

 

山善の主力事業は、「生産財関連事業」(機械事業、産業ソリューション事業、ツール&エンジニアリング事業、海外生産財事業)と、「消費財関連事業」(住建事業、家庭機器事業)の二つに大別されます。

 

もともとは機械工具の専門商社としてスタートした山善ですが、1965年に住宅機器分野に進出し、流し台(シンク)の販売をスタート。1978年からは、日々の生活シーンで使われるオリジナル商品を開発するなど、家庭機器分野に進出しました。現在の家庭機器事業では、「YAMAZEN」ブランドのたこ焼き器や扇風機などをはじめとしたプライベートブランド商品が一般的に知られるようになり、高機能ながらも、安価でデザイン性に富んだ商品群が人気を博しています。

営業時代の経験が商品企画・開発への想いを強める

私は、2003年に入社後、2017年までは営業部に在籍し、ホームセンターやディスカウントストアを中心とした法人営業を行っていました。家電営業をメインに担当していたこともあって、どれぐらいの価格帯の商品が売れるのか、どんな機能があれば喜ばれるのか、市場の相場感や消費者のニーズなどを知ることができた経験は、現在の商品企画・開発の仕事にも大いに役立っています。

営業を経て、企画・開発へ。調理家電のヒットメーカー

そうした経験を重ねていくうちに、「商品企画・開発に携わりたい」という想いが次第に強くなっていきました。商品企画・開発は業務内容が幅広いうえに、営業の時よりも一つ一つの仕事が部門に大きな影響を与えるため、外から見ているだけでも大変な部署だということは伝わってきました。ただ、そうしたプレッシャーよりも、チャレンジしてみたいという気持ちのほうが勝っていたんです。

年に一度、部署異動の希望を提出できるタイミングがあるのですが、商品企画・開発を希望する人は多いので、なかなか想いが実らず……。当時、事業部長宛の年賀状に異動願いを書くと実現するという迷信が社内に広まっていたこともあって、すがるような想いで年賀状を書いたこともありました(笑)。願いが叶ったのはそれから5年後のことですが、本当にうれしかったですね。

営業を経て、企画・開発へ。調理家電のヒットメーカー

6年間で100点以上の商品を企画・開発

2017年から商品企画1部に所属し、調理家電の企画・開発を担当。業務としては、商品の製造は協力会社に委託しているものの、企画・開発をはじめ、取引先との商談やバイヤーへのプレゼン、商品の価格設定、販促物の提案に至るまで、多岐にわたります。商品の発売後は、通販サイトのユーザーレビューのチェックや返品の検証作業なども行い、今後の改善にも努めています。

また、商品の生産工場が中国にあることから、海外出張も定期的に行きます。現地では商談や生産の立ち会い、時間が許せば展示会などにも足を運びます。海外は新しい技術を取り入れるスピードが速く、こんな技術があったのかという新しい発見も多いんです。

営業を経て、企画・開発へ。調理家電のヒットメーカー

私の場合、海外の協力会社や社内の開発担当者、マーケティング担当者、品質管理担当者などと一緒に、年間20~30点の商品を企画・開発。商品企画1部に移ってからの6年間で100点以上をリリースしています。一つの商品の企画から発売までは半年から1年ほどかかるので、複数の商品を同時進行するケースも珍しくありません。

 

営業は基本的にクライアントと双方向で仕事を進めていきますが、商品企画は自分たち主導で物事を進めなくてはなりません。そのため個々の裁量に委ねられる部分が大きいのが特徴です。その分、1年先、2年先を見据えながら商品を次々に企画・開発し、売上を確保していく必要があるので、難しさもありますね。

商品企画・開発という仕事の楽しさと難しさ

仕事のやりがいは、やはり企画・開発した商品を購入して喜んでくださる消費者の存在です。商品企画に携わっていると、お客様からの喜びの声がたくさん届きます。

 

中でも印象に残っているのが、私の父親から聞いたエピソード。「細かく温度調節ができて、赤ちゃんのミルクを作る時にもすごく便利なんですよ」と、父がある電気ケトルを同僚の方からオススメされたそうです。実はそのケトル、私が企画したものだったんです(笑)。その話を耳にした時、知らず知らずのうちに山善の商品が身近な人の暮らしを支えているんだなということを改めて実感しましたね。

営業を経て、企画・開発へ。調理家電のヒットメーカー

逆に、商品企画を長く続けるほど、アイデアがマンネリ化してしまったり、思い浮かばなかったりする悩みも。アイデアが枯渇しないよう、日々の暮らしの中にある家電製品を使いながら、「こんな機能があると便利なのに」、「もっとラクに手入れができないか」と、私生活から意識的に企画・開発のヒントを探り、蓄積できるよう心掛けています。

ちょっとしたアイデアが大きな効果を生み出す自信作

企画した商品の中で一番のヒットが、「減煙焼き肉グリルXGRILLシリーズ」です。現在4タイプを販売しており、2024年2月末時点でシリーズ累計約45万台を売り上げています。

営業を経て、企画・開発へ。調理家電のヒットメーカー

開発に至った背景は、焼き肉店に行かなくても、自宅で気軽に焼き肉を楽しみたかったから。お店では火を使いますし、小さい子どもがいると騒いでしまうこともあったため、行きづらさがありました。ただ、自宅で焼き肉をすると、煙や油ハネが気になってしまう…。そこで、煙や油ハネを抑えられる焼き肉プレートを自分で手掛けてみようと思い立ちました。

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このシリーズの一番のポイントは、プレート裏面のXカット構造です。プレートに残ったお肉の余分な脂を加熱することが煙や油ハネの原因になりますが、Xカットで傾斜を設けることで、脂を一つに集めて下に落としやすくしています。この構造により、スタンダードモデルでも煙は約70%、油ハネを約80%カットすることに成功しています。

営業を経て、企画・開発へ。調理家電のヒットメーカー

このシリーズを最初にリリースした2020年夏は、ちょうど巣ごもり需要が高まっていた時期だったこともあり、予想を上回る売れ行きでした。

 

また、大阪では一家に一台あると言われるたこ焼き器も自信作があります。

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この「極のたこ焼き器」は、通常のたこ焼き器の調理穴よりも大きくて深さがあるのが特徴で、ボリューミーできれいな丸型に成形できます。

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また、ヒーターを長くし曲げの形状を工夫することで、すべての調理穴に真下から熱を届けられるため、プレートの端や角でも焼きムラが起こりにくいのがポイントです。

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あともう1つ、大阪人の私としては、本体の縁まで引いた串ガイドにこだわっています。この目印があることで、たこ焼きの生地をたっぷり流し込んでも串ガイドの位置が分からなくなる心配がなくなり、調理しやすくなるんですよ。

営業を経て、企画・開発へ。調理家電のヒットメーカー

「大阪には一家に一台『極のたこ焼き器』がある」と言われるまで普及させていきたいですね(笑)。

従来の家電のデザインをがらりと刷新

私が営業をしていた頃は、万人に好まれるシンプルな機能やデザインがほとんどでした。しかし今は、同じ物が、同じように、同じ数だけ売れる時代ではなくなっています。というのも、ここ数年は海外の家電ブランドも含めてブランド数が急増し、それだけ製品の数も増えてきて、消費者の選択肢が広がっているからです。それによってお客様の好みも細分化してきている印象です。

私が商品企画1部に異動してからは、「調理家電のデザインが変わった」と嬉しい声をよく耳にします。例えば、これまでの家電のカラーといえばホワイトやブラックが定番でしたが、オフホワイトやベージュなどのナチュラルカラーやアースカラーなども展開。ブラックでもマット系なのかグロス系なのか、ビジュアルや用途にマッチした加工にもこだわっています。

調理家電の使用頻度や購入時の決定権、デザイン面のこだわりを考えた時、商品の企画はやはり女性の声を参考にすることが多いですね。デザインや機能の好みをリサーチするため、社内でも女性社員を対象としたアンケートを定期的に実施しています。

 

近年は女性にターゲットを絞った商品も数多くリリースされ、売上が順調に伸びている傾向にあります。機能面の充実はもちろんですが、より“振り切った”デザインにチャレンジする必要性も感じていますね。

作り手にとっても買い手にとっても大切な“値頃感”

家電製品は事故やお客様に危害が及ぶことが許されないものなので、当然ながら商品の安全性を一番大切にしていますが、次に大事にしているのは商品の“値頃感”です。商品の価格設定は、私たちの重要な仕事の一つです。単純に安ければいいという事ではなく「この金額を払って買う価値があるか」。営業時代から養ってきた市場の相場感や消費者のニーズを踏まえつつ、価格を決めています。ですので、すごくいいアイデアを思いつき、その商品を10,000円で売りたいと思っても、原価と照らし合わせた時にその値段で販売出来ないのであれば、企画自体をやめてしまうことも。

営業を経て、企画・開発へ。調理家電のヒットメーカー

近年は円安の影響が大きいのも悩みの一つ。消費者からすれば「この商品はこれぐらいの値段だろう」という肌感覚がある一方、資材などが高騰していることから、適正価格を設定するのが本当に難しくなっています。

 

価格は、私たちにとっても消費者にとっても、最も大事な要素の一つ。現代の消費者は、必要な物以外にはお金を使いません。だからこそ、ご満足いただける性能と価格のバランスを妥協することなく追求していきたいです。

グローバル市場でも勝負できる商品を

今後の目標は、グローバル市場でも勝負できる商品を企画・開発していくこと。現在は国内市場中心の商品を手掛けていますが、当社は2030年ビジョンとして「世界のものづくりと豊かなくらしをリードする」を掲げています。そのビジョンのもと、世界中の人々に「YAMAZEN」ブランドを広め、世界中で愛される商品を一つでも多く生み出していきたいですね。

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