“今”を表現する。イラストレーターさくらいはじめ【後編】

40歳を過ぎてから、
視野が日本から世界へ

個展をメインに力を入れていた2017~2019年は、東京を意識し勝負していた時期でした。それと同時に作品を出展した、大阪を基点にアジア圏の次世代クリエイターが集うアートフェア「UNKNOWN ASIA」は、視野が世界へと広がるきっかけになりました。タイ・バンコク開催の「ART GROUND 03 」では、自分の作品を初めて海外で出展し、現地で自分の作品が評価されていることを目の当たりに。40歳を過ぎてから、意識が日本から世界へと向くようになりました。

“今”を表現する。イラストレーターさくらいはじめ【後編】

以降、Instagramの投稿には日本語の文章以外に、不慣れな英文も追加しました(笑)。すると、中国や台湾、香港といった東アジア圏が空前のアートブームということもあって、アジアやヨーロッパからも展示会のオファーを頂いたり、自分の作品を海外から購入してくださる人が一気に増えたり、ものすごい反響でした。

ただ、いつまでも浮き足立っているのではなく、日本でも海外でも分け隔てのないインターナショナルな感覚を備えた作家になりたいと思っています。また、目標で言うと平面作品のほか、彫刻やフィギュアのような立体作品にも挑戦し、世界をあっと言わせてみたいですね。

滋賀出身の僕にとって
「オオサカ」は一番近い“大都会”

僕は滋賀県の出身で、京都にも10年ほど住んでいましたが、そんな人間からすると大阪は一番近いところにある“大都会”。パソコンが一つあれば田舎でも創作活動ができる現代社会の中で、あえてその大都会に身を置いているのは、大阪の人や雰囲気、時間の流れなど、日常的に都会の感覚に触れていられるというのが大きいです。

ふらっと外に出ると、大きな街に自転車で行けたり、レコード店やギャラリーの展示会にすぐ足を運べたり、音楽イベントにだって参加できる。この感覚がないと思いつかないアイデアや考え方があると、都会に住むようになって感じていますね。

地方都市の「オオサカ」を
活動拠点としているワケ

先ほど大阪を大都会と言い表したものの、東京こそが日本一の大都会です。では、なぜ地方都市の大阪にとどまり、活動しているのか。それには、僕なりの理由があります。

まず一つが、大阪は東京に次ぐ第2の都市であるということ。それはつまり、東京に対してどこかコンプレックスを抱いていると思うんです。大阪人は東京人に負けないよう、認められるようと、必要以上に頑張ったり、目立とうと着飾ろうとする。それが大阪人の“コテコテ感”や“too much”なイメージにつながっているのかなと。だからこそ、大阪人はファンキーで、パワフルで、個が突出していて魅力的。いい意味で粗削りな環境に身を置くことで、僕の創作意欲をより一層かき立ててくれるんです。

“今”を表現する。イラストレーターさくらいはじめ【後編】

今の仕事は、東京のクライアントが大半になっています。広告やデザイン関連の仕事の多くは東京が中心ですからね。ただ、もし大阪ではなく東京を拠点にしていたら、わざわざ世界に視野を広げる必要がなかったかもしれないと、思うことがあります。東京である程度のキャリアを積み、それなりに認められて、仕事がしやすい環境で創作活動をしていたら、現状に甘んじていたシナリオも否定できないですから。

“今”を表現する。イラストレーターさくらいはじめ【後編】

今の僕があるのは、やっぱり大阪に住んでいるからこそ。僕にとって「オオサカ」は、常にハングリーでいられる場所なんですよ。

【 完 】

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