大阪の台所『黒門市場』コロナ禍を乗り越え再びにぎわいを見せる今

お話を聞いた人

  • 北岡 裕一さん
  • 北岡 裕一さん

    「黒門市場」を運営する黒門市場商店街振興組合の事業部長。創業75年にもなる「三都屋」店主でもあり、和菓子やお餅などを販売しています。100年に一度のパンデミック「コロナ禍」を乗り越え、インバウンド需要で盛り上がる今と、2025年の大阪万博に向けて、その後の未来に向けての想いをキリトリます。

200年の歩み 黒門市場とは

黒門市場は、「浪速の台所」「大阪の台所」と呼ばれる、大阪を代表するアーケード商店街です。夏のハモ、冬のフグが名物で連日多くの人で賑わい、全長は約580メートルにものぼります。鮮魚をはじめ、青果、精肉、漬物、乾物等の様々なお店が約150店舗を連ねており、中には今年で創業126年を迎える老舗のお店もあります。聞いて驚かれる方もいるかと思いますが、黒門市場商店街の起源は文政5~6年(1822年~1823年)頃にまでさかのぼります。

大阪の台所『黒門市場』コロナ禍を乗り越え再びにぎわいを見せる今

コロナ禍を経て本来のにぎわいを取り戻す

新型コロナウイルスの影響で3年間シャッターが閉まっていましたが、現在は対策も緩和され、2023年12月時点で1日3万人の通行がありました。「早く来たかった」という声をお客様からいただくことができたことで、長年に渡って人々に愛されてきたことを強く実感することができました。また、10年ほど前から、インバウンド需要が高まっていますので、8割は海外の観光客でにぎわいを見せています。

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黒門市場を訪れてくださる全ての方を大切に
~運営時の心がけ~

インバウンド向けに商売をするのではなく、創業当時から構えるお店もありますので、近隣に住まわれている方にも買っていただけるものを提供したいと考えています。それを海外のお客様にも買ってもらえることを常に心がけています。ここ最近では、従業員向けに英会話教室を開くことによって、外国語での接客に対応できるようにもしています。

商売方法の工夫でコロナ禍を乗り超える

「商店街の火は消したらダメ。」の想いのもと、コロナ禍中も開けているお店はありましたが、従業員は雇えず、多くの店が家族経営のみの体勢になりました。日本人に向けての商売でしたので、インバウンド狙いの店は、開けていませんでしたね。また、お客様を取り戻すために主に3つの取り組みをしていました。

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1つ目はテレビ番組出演です。応援の電話をいただくこともあれば、「客が来なくなったのは、海外の観光客に向けて商売していたからだ。」というような厳しいお言葉をいただくこともありました。

2つ目はワンコイン市の開催です。100円、500円、1000円というような普段では販売していない価格で商売をしました。メディアも活用しながら、集客をいたしましたので、その時は、日本人のお客様も多く来てくださいました。

3つ目は歳末市です。コロナ禍でも年末は、広い地域からお正月用品を買いに多くのお客様に来ていただきました。「ここのお店じゃないと新年は迎えられない。」といったお言葉をいただけたことが励みにもなりました。

コロナ前後で起こった変化とは

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コロナ禍中は、閑散としていました。特に市場の南側はインバウンド狙いの商売を行っている店が多かったため、シャッターが目立っていました。ご年配で商売をされていた方は、多くやめられました。しかし、ここ最近ではコロナも明けてきており、新規参入のテナントも増えてきました。飛行機の運行が開始され、1週間後には、海外の観光客は戻ってきました。黒門市場は関西国際空港からのアクセスが良く、海外の観光客で賑わう道頓堀からも近いため、そういった面で非常に助かっています。

インバウンド需要が高まることで直面した課題

「黒門市場としての方向性のズレ」です。近年、外国人経営者のインバウンド向けの店舗が多くなっています。それによって海外の観光客をターゲットとした串焼きのお店が多く並ぶなど、日本人のお客様からは「インバウンド向けになった」と言われます。それをX(旧Twitter)でたたかれることもありますので、近隣のお客さまが離れていってしまっているのが非常に残念です。ただ海外の観光客がいなければ、商売が成り立っていないことも現実としてあります。

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200年の歴史を繋いでいくため、イベント開催で盛り上げる

具体的には【黒門市場の日制定記念セレモニー】を実施し、文楽の人間国宝である桐竹勘十郎氏にもご協力をいただきました。文楽はもともと大阪発祥で黒門市場から距離も近いので、国立文楽劇場とは交流を多く持たせていただいています。2つ目は11月18日が【黒門市場の日】(いいいちばの日)でしたので、1,118、118円などのお買い得な商品を売り出すイベントを開催いたしました。テレビ局に取材をしていただいた効果もあり、賑わいを見せていました。そして、歳末売り出しまでこの盛り上がりを持って行く流れを作ることができましたので、感触は非常に良かったですね。

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2025年の大阪万博開催に向けて

今まで以上に海外の観光客が来られることを期待しています。そのために準備していることは、【ゴミ・トイレ・食べ歩き】への対策です。ゴミに関しては、食べ歩きの際に必ず出るものですので、各店が準備するようにしています。また、現在道頓堀にてソーラー自家発電で動く1/5圧縮のゴミ箱を設置する動きがありますので、実験が上手くいけば黒門市場にも導入したいと考えています。トイレに関しては、現状足りていないため、増設を検討しています。市場の宣伝のために投資することも大変ですが、200年の歴史を繋いでいくためにこういった物や設備への投資が何よりも重要だと考えています。

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「大阪の台所」として、これからも大切にしていきたい想い

私の個人的な想いですが、「日本の食文化を世界に発信する」ことを目指しています。黒門市場は、浪速の台所ですので、特に「高級鮮魚の市場」を残していきたいと考えています。例えば、マグロの専門店やふぐ専門店がありますように黒門市場には、専門店が多いです。昔は「エビ専門店」や「タコ専門店」などもありました。なので、「食」にこだわりたいという強い想いがあります。「美味しい・安心・安全」をこれからも打ち出し、日本人の方も海外の方も楽しんでもらえるような黒門市場にしていきたいですね。

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紹介した場所

  • 黒門市場
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    アクセス
    【公共交通機関をご利用の場合】 千日前線Osaka Metro日本橋駅 10番出口徒歩約5分
    住所
    〒542-0073
    大阪府大阪市中央区日本橋2丁目 Google Map
    電話番号
    TEL:06-6631-0007 FAX:06-6643-6464
    営業時間
    営業:9時~18時(店舗により異なる)
    定休日
    休業:不定
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